キャバ嬢VSデリヘル嬢

【ホストクラブ】

流星・・・大好きだよ。
あなたのためなら何でもできる。
あなたのためなら、この汚い世界の泥水をお腹いっぱいになるほど飲んでもかまわない。
愛しているの。

たとえ、あなたが私を踏み台にしているとわかっていても。

「愛子・・相談があるんだけどさ・・・」
流星が、俯きながら私の表情を伺っている。

ここは歌舞伎町。
見ていて五月蝿いと感じるほどのきらびやかなネオン。綺麗な男女が多く行きかう街。
でも、この街の風景を信じてはいけない。
決して明るいだけの街なんかじゃないから。
むしろ、その風景は疑ってしまうものがあるよね。
「みんな、本当に幸せ?心の底から笑っている?」

流星は、この嘘だらけの街のホストだった。
私は昼間会社の上司に腹が立った分だけ、流星に癒しを求めていた。
・・・最初はね。

「流星?どうしたの?」
一応聞いてはみるけど、流星の相談なんて想像がつく。
「愛子さ、もう少し通ってくれないかな?もう少しでナンバー入りできそうなんだ。ナンバーさえ手に入れば、下っ端仕事も終わるし、精神的にラクになるから、もう少し愛子のこと構ってやれると思う」

「いいよ。呼ばれたら必ず来るようにする」
「やった!愛子にしかこんな情けないこと頼むことできないんだ・・・愛子の前でだけは自然体いられるってことかな・・・」
「情けなくなんかないよ。私を呼ぶのだって仕事のうちじゃない・・・流星は頑張ってるよ」
「仕事とか・・・そんなつまらないこと言わないでくれよ・・・」
「ふふ・・・」

今じゃどちらが癒されているのかわからない。
事実、私は追い詰められていた。
流星はまだ入店したてのホストだから・・・売り上げがあまりないってわかってた。
でも、私は普通のOL。
キャバクラ嬢みたいに大きなお金を稼いでいるわけじゃない。

でも、少し曇った顔をすると、流星は必ずあの女の話を持ちだした。
「キラリは自分勝手で俺のことなんか考えてくれないから、愛子は素直で愛してしまうんだよなぁ」

キラリというのは、この街のキャバクラ嬢で、かなりの売り上げがあるらしく、流星の太客の一人だった。
毒々しい厚い化粧で、一目でキャバ嬢という職業がわかる派手な服装にヘアセット。
店で何度か会ったことがあったが、私にケンカを売るように高いお酒を流星に飲ませていた。

私の大嫌いな女、キラリ。
本名は知らないけど、ネットでは必ず名前が挙がるほど有名なキャバ嬢。
そんな彼女がどうして新人の流星を気に入ったのかわからないけど・・・多分この整った顔のせいだろう。

 

※ 当ノベルは錦糸町のデリヘル「イープラス」で働くAさんからお聞きした実話を元に構成したフィクションです。かなり脚色を加えてはいますが、これに近い体験をしている女の子は、風俗やキャバクラで仕事をする女の子には意外と多いのかもしれません。ちょっと不思議な世界になっているかもしれませんが、そんな女性たちを想像して読んで頂ければ嬉しく思います。また、取材にご協力いただいたAさんをはじめ、お世話になった方々には、この場を借りて御礼申し上げます。

 

【回想】

流星との出会いは、2ヶ月前。
流星の働くホストクラブに会社の同僚に連れられて、私ははじめてのホスト遊びを経験した。
流星は入って数日のホストだったが、ヘルプとして私たちの席に座ったの。

私の同僚の明子は、この店のオーナーの客だった。
ホストクラブのオーナーともなると、お客は掃いて捨てるほどいる。
明子は、それを理解し上手に遊ぶことができる大人の女性だった。
私と同じ年なのに、ホストとの恋愛ルールを守っている彼女は尊敬してしまう。
だって、私にできなかったことだから。

明子は「ホストは幹部クラスの人じゃなきゃ心に余裕がなくてダメ。必ず濃い色恋営業が入ってくるからね」と事前に私に教えてくれていた。
しかし、私は流星という新人ホストに見事にハマってしまったのだ。

あの日、流星が「お邪魔します」と、明るく笑顔で席に座ったときの顔は忘れない。
凄く整った顔立ちなのに、笑うと子どもみたく無邪気なの。
「流星っていいます!自分、新人なので、思う存分いじめてくださいww綺麗なお姉さんにいじめられると萌えますww」
そんな冗談を交えながらも、その表情は緊張しきっていた。

すぐにわかったよ。
「この人、無理してる」って。
こういう派手な場所に向かない性格の私には伝わるものがあった。
私は本来ならホストクラブなんて一生縁がないほどの生真面目人間。
明子の無理矢理な誘いがなかったら、来ることなんてなかった。

その日はたまたま顧客から理屈の通らないクレームを出されてイライラしてたの。
「たまには息抜きしなきゃダメ!きちんと癒してくれる場所あるから行くよ!」と、明子が強く言うものだからノコノコついて着ちゃった・・・というわけ。

流星は、そんな私の横に座った。
ヘルプの仕事は、ひたすら飲むこと。
流星はその仕事を無我夢中でやっていた。
「もうやめたほうがいい」って思うほど。胸が痛くなったのを覚えてる。
でも、明子とオーナーは「もっと飲め」コール。
そりゃあ・・・そのとき私たちの席は盛り上がっていたけど・・・世間では何度もアルコール中毒が問題になっているのに、流星の飲み方は危険なような気がしたの。

「流星くん、無理しないで!」

その一言で、流星は私のことを好きになってくれたのだと言った。
本当かどうかなんてわからなけど、それを信じてみたくなっちゃったの。
新宿、歌舞伎町なんて嘘の塊だって思っているくせにね。

それから流星とアドレス交換し、毎日のようにメール交換をした。
メールが盛り上がった日には会いたくなってしまって、店に来てしまった。

 

※追記:こちらのノベルが、なんと大手キャバクラ情報誌のポケパラ様で取り上げて頂きました。サイトはこちら新宿キャバクラ情報[ポケパラ]となりますが連載企画もご検討いただいています。ますます多くの方に読んで頂ければ作者としては嬉しいかぎりです。